神様が導いた運命の出会い。

持病の股関節疾患でリハビリ通院を始めて、今年の夏で9周年を迎える舞姫ですが、当時から現在に至るまでお世話になるのは、理学療法士O先生。先代の日記でも幾度となく取り上げてきたので、常連の来訪者さん達にはすっかりお馴染みですよね。9年前、この整形外科を訪ねて初めて彼からリハビリ指導を受けた日のことを、いまも舞姫は鮮明に記憶しています。

診察を終えた舞姫が、待合室からガラス越しに見えるスポクラの如く設備が充実した立派なリハビリ室に感嘆していたところ、目の前に現れたのは舞姫を担当することになったという20代半ばの白衣の青年。さっそくリハビリ室の片隅にあるベッドへと導かれ、まず問診&触診が行われることになった舞姫でしたが、その青年は何の躊躇もなく舞姫の股関節を手で掴んで、「○○(←舞姫の苗字)さんの場合は、ここがね…」と、平然とした顔で説明を始めました。唐突にきわどい箇所へ触れられて、さすがに舞姫も一瞬戸惑いましたが(汗)、そんな舞姫の気持ちなど察することなく、表情ひとつ変えずリハビリ指導を進めていく彼の姿を見て、咄嗟に「この人は、舞姫を“患者”ではなく“物”だと思っている」と直感した。20代半ばの青年が、40過ぎのオバちゃんの股関節を平気で触れる筈がない。

よくよく考えてみたら、相手の身体に触れなければ指導できないことなど、長年のダンス経験で舞姫は既に知っていた筈。けど、何故か当時の舞姫は彼を疑ってしまったのです。これには、根拠がありました。もし舞姫が彼の立場だったら…自分よりも遥かに年上の加齢臭プンプン状態のおっさんの股関節など、どんなに大金積まれても絶対に触りたくない…と言うか、触ることはおろか半径1m以内に近寄られるのですら嫌だ。けど、もし、それでも嫌な患者のリハビリ指導をどうしてもしなければならないとしたら…その患者を“人間”ではなく“物”だと思ってしまうしか方法はない。そういうことを考えていたら、「20代半ばの青年が、40過ぎのオバちゃんの股関節を平気で触れる筈がない。→私を“物”扱いしている」…という図式が、当時の舞姫の脳裏に自然と描かれてしまったわけです。

舞姫がそんな憶測を描いていることなど知る由もなく、その後も坦々とリハビリ指導を進めていく彼でしたが、しげしげと問診票に目を通して舞姫がジャズダンスを嗜むことを知ると、レッスン状況や今後の予定など詳しく尋ねてきました。ちょうど当時スタジオでは毎年恒例の発表会の稽古中だったので、そのことを彼に話すと、「じゃあ、モチベーションを上げてがんばりましょう!」…そう強い口調で話す彼の瞳は、しっかりと舞姫の瞳を見据えていました。もしや、こいつ意外と“できる男”かもしれない…そんなことを予感させた一瞬でありました。かくして、週1くらいのペースでのリハビリ通院を勧められた舞姫は、まずは彼の“お手並み”を拝見しようという気持ちも手伝って、この整形外科へしばらく通うことにした次第でした。

「こんな青年に、何ができる?ダンスのことなんか何ひとつ判らないくせに」…親子ほども年齢差がある若い理学療法士を、ある意味“上から目線”で見ていた当時の舞姫でしたが、予測に反してこの青年はとんでもない“曲者”だった。まるで読心術でもあるんじゃないかと思われるほど図星な指摘の数々は、当時既にダンス歴18年だった舞姫のプライドを悉く打ち砕いた。そして、姿勢や所作・歩行法から、普段のトレーニング法やコンディショニング法に至るまで、舞姫はこの青年の指導のもとで基礎から叩き直す羽目になった。リハビリのことなど右も左も判らなかった舞姫にとって、この通院は新鮮な刺激の連続だったけど、ここへ通って彼の熱心な指導を受け続けるうちに、とにかく当時の直感“ハズレ”だったことだけは充分理解できた。患者を“物”扱いするような者に、こんな指導ができる筈がない。

程なくして、患者としての症状改善のための“治療”とダンサーとしての“スキルアップ”とを“連結”させる“スポーツリハビリテーション”の魅力の虜となっていった舞姫でしたが、このリハビリ室で得られる知識や情報の数々は、ダンサーとしての身体作りにも役立つことばかりでした。熱心な彼の指導は、“大儀”を絵に描いた如くの横着者だった舞姫を大きく変貌させました。怠け者の舞姫が、自宅の居間でもコンスタントにリハビリに励むようになるなどと、いったい誰が予測しただろう?スポーツ選手が大切な試合に備えて行う“ピーキング”(Peaking)と呼ばれる調整法の技術を舞姫に伝授したのも、彼だった。リハビリ“身体”だけでなく“心”も鍛えてくれることも、彼から学んだ。

「そのハンディを承知でダンス続けるって決めたのは、○○(←舞姫の苗字)さん自身なんだから!」…そう言って彼はいつも舞姫に“コンディショニングの上級者”を志すことを要求してきます。一介の患者に過ぎない舞姫に、なぜそこまで熱意を注ぐ?と逆に疑問を抱くことはあるけど、彼の望みを舞姫は叶えたいと思っています。まずはお手並みを拝見しよう…などと思って“上から目線”で彼のことを見ていた当時の舞姫は、のちの舞姫が彼のことを“Twitter”で密かに“鬼の某PT”と呼ぶようになるなどと予測もしなかったでしょう。リハビリ通院を始めて9年目を迎えた現在、既にレギュラークラスを退いて金曜フリースタイルクラスへと移った舞姫は、もう舞台に立つことはなくなってしまったけど、神様が導いた運命の出会いのおかげで、いまも舞姫は無理のない範囲で地道にダンスを続けるに至っています。感謝。(-人-)

スポンサーサイト