ボルト選手の棄権は、なぜ起きたのか?!

数日ほど前、なにげに自宅で熱いコーヒーなどすすりながらネットの世界を彷徨っていたところ、ちょっと興味深い記事を発見しました。先達て無事終了した「世界陸上2017」男子4×100mリレーにて銅メダルを獲得した日本チームの活躍は記憶に新しいところですが、舞姫が注目したのは、既に今大会限りでの引退を表明していたウサイン・ボルト選手に関する記事。↓
『ボルト棄権の原因は「寒すぎる招集所」 同僚が主催者に怒り「彼は冷え切っていた」 | THE ANSWER スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト』

この記事を読んで、真っ先に思い出した場所がありました。それは、舞姫が通うジャズダンススタジオで毎年恒例の発表会の会場として使わせて頂いている某劇場の舞台裏。我々出演者は自分の出番が近づくと、楽屋を出てこの舞台裏のスペースで待機をするわけですが、舞台専用の機材を出し入れするための搬出入口に接する舞台裏のスペースには、充分な暖房が行き届いておらず、上演時期が秋から冬への変わり目なことも災いして、ここで待機していると物凄く寒いんです。(>_<)

無論、劇場入りして以降の進行状況によっては、この寒い舞台裏でかなり長い時間待たされる事態が生じる場合もあるわけで、我々出演者は露出度の高い舞台衣装の上から長袖のウェアを羽織ったり、脚にはレッグウォーマーを捲し立てたりするなどして、各自で工夫しながら寒さをしのぎ、身体が冷えないよう絶え間なくウォームアップを続けながら、凍えるほど寒いこの舞台裏で待機したことを記憶しています。

某劇場の舞台裏の寒いスペースに限った話では、ありません。多目的な用途で建てられた劇場施設の場合、おうおうにして舞台もステージパフォーマンス上演を前提には作られていないため、クッション性に欠ける硬い床は身体への負担も重く、疲労を更に倍増させます。

また、常に環境の整った楽屋に恵まれるとは限らず、冷暖房設備や空調設備も何もない粗末な楽屋で、不自由な思いをしながら過ごさなくてはならない場合も多々起きます。ウォームアップ用スペースの確保にも事欠き、薄暗い廊下や階段の踊り場などでアップに励むことも多かったことを記憶しています。

さらに、劇場施設内のエレベータは、一般の利用客も頻繁に出入りするため、我々出演者は使うことができないので、人目に触れにくい場所にある階段を利用するわけですが、劇場施設によっては楽屋が舞台から遠く離れた位置にある場合もあって、舞台〜楽屋間の往復だけでも体力的な消耗は意外と激しくなります。

レギュラークラス在籍時の舞姫は、有り難いことに舞台でも出番を多く与えられましたが、そのぶん劇場入りするたびに階段を使って舞台〜楽屋間を幾度となく往復する羽目になり、股関節疾患を抱える高齢ダンサーの舞姫には正直しんどかったことを記憶しています。

しかも、ウチのスタジオでは劇場施設内では舞台以外の場所でダンス用のシューズを履いて歩くことを禁じているので(ゴミや埃、清掃剤などをシューズに付着させて舞台上に持ち込んでしまうことで、舞台の床に悪影響を及ぼす危険性があるため)、楽屋〜舞台間の往復には着脱が容易なスリッパやルームシューズ等を活用するのですが、階段を昇降すれば踏み外して怪我をする危険性も当然あります。劇場入りして以降の時間を慌ただしく過ごすなかで、急いで階段を昇降しなければならない場合も多いですが、細心の注意が必要です。

これらは、なにも股関節疾患を抱える高齢ダンサーの舞姫に限った話では、ないのです。身体能力に優れた若いチームメイト達ですら、コンディショニングが充分でなければ突発的な負傷を導く可能性だってあります。

劇場入りして以降、我々舞台人のコンディショニングは最も重要な正念場を迎えます。たとえ劇場入りの日の直前まで、どんなにしっかり“ピーキング”に努めても、劇場入り以降に崩れてしまったのでは、これまで稽古で積んできた努力も水泡と化してしまいます。

普段使い慣れたスタジオとは環境も一変する劇場施設でのコンディショニングは、意外と困難を極めるものです。ただ、観客からチケット料金を頂戴し、劇場までご足労頂き、上演中の時間を客席に拘束するというのは、物凄い責任の重い行為なんです。

だからこそ、我々舞台人は観客に“楽しい時間を提供する”義務があります。そのためには、劇場入りして以降も気持ちを引き締めて、可能な限りのコンディショニングに努めて、納得できるベストな体調で本番の舞台を迎えることが重要。

さまざまな地域を転戦するスポーツ選手達。本番の試合で使う競技場は勿論ですが、合宿や遠征などで、普段使い慣れた練習場以外の場所で練習をする機会も多いかと思います。本番の試合で、納得できるベストパフォーマンスを披露するためにも、訪ねる先々で著しく変わる環境において、その場その場に応じた適切なコンディショニング対策は必須です。

さて、ボルト選手棄権する事態に陥った要因は、いったい何だったんだろう?無論、彼ほどのトップアスリートなら、これまで世界中さまざまな地域を転戦してきただろうし、陸上選手としてのコンディショニングが困難な悪環境で挑んだ試合も何度もあったと思いますが、経験豊富なボルト選手なら、その場その場での環境の変化に応じた適切なコンディショニング法なども、充分に熟知していた筈。

舞姫が暮らす札幌よりも更に北の緯度にあるロンドンの街は、世界陸上の開催期間中も肌寒い日々が続いていたと聞きますが、同僚さんがボルト選手の負傷の要因として挙げた寒い招集場も、同じ条件で待機していた選手達のなかには、メダルを獲得したり好記録を残したりするなど、しっかり結果を出した者もいるわけです。

舞姫は、陸上競技に関してはさほど詳しい知識もなく、右も左も判らない素人なので、真相は知る由もありませんが、赤道からも程近い南国ジャマイカで生まれ育ったボルト選手が、肌寒いロンドンの競技場内の悪環境のなかで、充分な防寒対策を講じることができなかった可能性は考えられると思います。

勿論、主催者側を庇う気は毛頭ありません。ボルト選手以外にも、北国の極寒など経験する機会のないような南国から参加する選手達もたくさんいます。開催場所が北の街ロンドンなら、夏場に想定外の寒さに襲われることも予測したうえで、参加するすべての選手達が開催期間中を快適に過ごし、素晴らしいベストパフォーマンスを披露することができるよう、主催者側も競技場および関係施設の環境整備に精一杯を尽くすべきと舞姫は考えます。

2年前にレギュラークラスを退いて舞台から離れた舞姫は、もう劇場入りして以降のコンディショニング対策に苦心することもなくなってしまったけど、これからスタジオでは、毎年恒例の某公演を今月下旬に、そしてスタジオ発表会の上演を11月に予定して、出演するチームメイト達は稽古に追われる日々が続きます。

劇場施設は勿論ですが、総見などでスタジオ以外の場所で稽古をする機会もあるでしょう。先生達&チームメイト達には、環境の変化に応じたコンディショニング対策を充分に講じて、納得できるベストな体調で本番の舞台に備えてほしいと願うばかりです。(-人-)

舞姫の“スポーツ心臓”。♪

開催中のリオ五輪も、折り返し地点を廻りました。舞姫も、内村航平選手が金メダルを獲得した体操・男子個人総合決勝や、錦織圭選手が銅メダルを獲得したテニス・男子シングルス3位決定戦を、ついつい“完徹”状態でテレビ観戦してしまったりなど、寝不足の日々が続いているわけですが(汗)、情報収集がてらネットを彷徨っていたところ、ちょっと興味深い記事を発見したので、紹介したいと思います。→「祝!リオ五輪開幕 マラソンや競泳などトップアスリートたちの「スポーツ心臓」は病気か?|健康・医療情報でQOLを高める〜 ヘルスプレス-HEALTH PRESS」

まずは、基礎知識的な話から。“スポーツ心臓”というのは、長期間に渡って激しいトレーニングを持続的に行うことで、心臓の筋肉が鍛えられ、心臓が拡大される現象のことで、一般の人より脈拍数が少なく穏やかで、少ない呼吸で必要な空気を身体に送ることができ、心肺機能に優れていることが特徴。

主に、陸上の長距離や自転車競技、スキーのクロカン競技など、持久力を要するスポーツ選手に多いそうです。なお、普段スポーツされる習慣のない一般人に同様の現象がみられる場合は、心肥大や心筋症などの重篤な心臓疾患を疑われてしまうのだそうですが、スポーツ選手やダンサーさんの場合は、高度な運動に耐えうるための適応現象であると解釈され、特に治療の必要はないとのこと。

ぢつは舞姫も、数年ほど前の内科検診にて“スポーツ心臓”との診断を既に受けているんですが、確かにダンスにも持久力は重要なので、20年以上も続けてりぁ…って気はします。内科の主治医M先生から告げられた当時は、耳慣れない言葉に戸惑った舞姫でしたが、M先生曰く「別に“病気”ではないから、大丈夫」とのこと。

当時、理学療法士O先生にも、さっそく“スポーツ心臓”について尋ねてみたところ、紙にサラサラと心臓の絵を描きながら説明を始めたのですが、大動脈やら肺静脈やら徐脈やら、小難しい言葉がズラズラ出てくるもので、ちょっと消化不良気味に…(汗)。困った顔をする舞姫に、「ぢゃあね…たとえば1万円の品物を、分割払いで買うとするよね。1回につき5千円払うのと、500円払うのとでは、どっちが回数少なくて済む?」…と、O先生。これで、舞姫も妙に納得したことを記憶しています。(^^;)

忘れもしない出来事が、ひとつあります。話は、6年ほど以前に遡ります。婦人科疾患“卵巣腫瘍”で手術をすることが決まり、入院に先駆けた諸々の検査でのこと。呼吸器の検査が行われた際、機械が弾き出した検査結果の桁外れな数値に驚いた看護師さんから、「すみません、もう一度お願いできますか?」と言われ、再度検査をすることに。

やはり先と同様に出た数値にも未だ信じられない様子で、「おかしいなぁ?この機械、壊れてるのかなぁ?」…と、しきりに首を傾げる看護師さんでしたが、はたと思い立ったように「なにかスポーツされていますか?」と尋ねられ、「ジャズダンスしています。内科で“スポーツ心臓”と言われました」と伝えると、ようやく「なるほど〜!」と納得して頂けたことを記憶しています。♪

余談ですが、数年ほど前たまたま立ち寄ったスポーツ用品店で、ちょっと珍しそうな新発売のスポーツ飲料に興味をそそられて買おうとした際、「これは、普段スポーツをされるかたのために作られた飲料なので、お客さまのようなかたがお飲みになるものでは…?」と、店員さんから困惑した顔をされながら言われたときは、さすがに閉口しましたが…(渋)。

確か、そのときは職場帰りのOL丸出しの服装で、ダンスのレッスンもない日で持参のバッグも小さかったし、普段から血色も悪くて顔も青白いし、小柄で痩せ気味な体格からは、そんなスポーツやダンスなどしそうな人間には、その店員さんにはとても見えなかったのでしょう。買う気も萎えてしまった舞姫は、「あ〜そうですか、ぢゃあ結構です」と言って、そのまま店を出たことを記憶しています。(-“-)

ダンスを始めて今年で26年目を迎えた現在でも、舞姫は“アスリートオーラ”の薄い人間でして、確かにダンスを長く続けてきたおかげで、普段の姿勢や所作などには、ある程度は定評がありますが、運動されるかたが放つオーラは別モノみたいで、舞姫がダンスをすることを初めて知った人は、たいてい意外そうな顔をして驚くので、よほど舞姫はイメージ的に“運動”とは縁遠いんでしょう。

思い起こせば、婦人科で呼吸器の検査を受けた日も、確か仕事帰りに職場からそのまま総合病院へ直行して、“普通のOL”丸出し状態の井出達だったので、検査を担当された看護師さんが“スポーツ心臓”という可能性を視野に入れていなかったことも、納得できます。きっと、キャラクター的に“スポーツ”だの“ダンス”だのと結び付きそうな印象が、舞姫にはないんでしょうね。

だから、“スポーツ心臓”の持ち主であることをM先生から告げられた当時は、その類のオーラが薄かった舞姫も、初めて“それらしい”ことを言われたような気がして、妙に嬉しかったんですよ。ただ、運動の習慣がなくなると“スポーツ心臓”の症状も自然と消失するそうで、舞姫も舞台活動の中枢を担うレギュラークラスを退いて運動の頻度も減ったので、そのうち“普通の心臓”に戻るんじゃないかと思いますが、不器用な舞姫の数少ない“取り柄”のひとつだった“スポーツ心臓”が失われてしまうのは、ちょっと淋しい気もします。(^^;)

ダンスの世界で普及させたい!“スポーツ医療”

さて、貼付の写真は、舞姫愛用の“ストレッチポール”です。日頃この日記をお読みくださっている常連の来訪者さん達や、“Twitter”のフォロワーさん達であれば、今更詳しい説明は不要かと思いますが、“ストレッチポール”(Stretch Pole)というのは、直径約15cm長さ約1mの円柱状の器具。



スポーツの世界では、セルフ・コンディショニングの必須アイテムとして広く普及していて、自力でのケアが困難な部位の筋肉も手軽に解すことができる、“孫の手”の如く便利な器具です。ちなみに、舞姫が股関節の持病でリハビリ通院する整形外科では、リハビリを処方された患者さん達が誰でも自由に使っても良い状態で、リハビリ室の片隅に置いてあります。

このストレッチポールの存在を舞姫が知ったのは、7年前にリハビリ通院を始めて間もない頃。「きょうは、これを使ったリハビリを指導するョ♪」…と言って理学療法士O先生が持ってきたのが、ストレッチポールでした。

得体の知れない謎の器具を唐突に手渡され、「この“巨大な麺棒”のような道具は何?いったい、どーやって使うの?」…と、当時の舞姫は皆目見当もつかず首を傾げるばかりでしたが、股関節疾患の改善にも有効で、これを使ったリハビリを、これまで舞姫は数多くO先生から学びました。

リハビリ通院で存在を知って以降、その魅力にすっかりハマった舞姫は、さっそく中心街の某量販店にてストレッチポールを購入。以降、自宅の居間でのリハビリにも便利に活用しています。♪

競技スポーツの現場では、多くの選手達が当たり前の如く持ち歩き、試合や練習の合間のコンディショニングに活用する光景を頻繁にお見受けするストレッチポールですが、あいにく“スポーツ医療”の認知度が低いダンスの世界ではストレッチポールの普及率も低く、舞姫の周囲のダンス関係者には、その存在すら知らない者も、まだまだ多いです。

道内各地から数多くのダンサー達が集う合同公演の現場でも、このストレッチポールを携帯するダンサーに、これまで舞姫は一度も遭遇したことがありません。昨年、某公演の総見で舞姫が持参したときは、珍しい巨大な麺棒を好奇の目で見る周囲の視線を妙に感じたことを記憶しています。「あの人が持っている、あの大きな棒は何?」…きっと、多くのダンサーさん達がそう思いながら舞姫を見ていたことでしょう。

ストレッチポールの普及率の低さは、ダンス界におけるスポーツ医療の認知度の低さを象徴する一例でしか過ぎません。幸い舞姫は、7年前の股関節の持病の発覚を機に、保存療法の分野で優れたスポーツ整形外科との出会いに恵まれ、競技スポーツの世界で実践されるトレーニング法やコンディショニング法などの身体作りのノウハウ、そしてスポーツの世界が持つ特有の“考え方”だったり“姿勢”だったり“概念”だったり、そういったことを学び知る機会を得ることができましが、未だスポーツ医療の普及が遅れているダンス界では、舞姫が感じる限りでは現状は厳しい印象。

過去に舞姫も、スポーツ医療の観点からは有り得ない非常識も甚だしい光景に何度も遭遇しました。たとえばウチのスタジオでも、舞台の稽古に追われる多忙な時期に入ると、本来ダンサーとして最も重要な筈の基本の身体作りのためのレッスンは殆どできなくなるのが暗黙の了解と化していて、ぶっちゃけ全然アップする間もなく唐突に通し稽古に入ることも珍しくありません。

ただ、競技スポーツの世界では、ウォームアップをせずに選手達に試合練習をさせたりするなどと到底考えられませんし、選手達が“貴重な人材”だからこそ、試合や練習に追われてどんなに多忙な時期でも、適材適所でコンディショニングを徹底するのが常識です。けど、ダンスの世界では、もしスポーツドクターや理学療法士が見れば「とんでもない!」とお叱りを受けそうな非常識な行為が、未だ横行しているのが現状です。(-“-)

舞姫の知る限りでは、公的医療を否定するダンス関係者も未だ多く、ケアを民間療法に頼る者も決して少なくはありません(ダンサー達を指導する立場であるインストラクターやスタジオ経営者ですら、公的医療否定派や民間療法推奨派は多いです)。

ざっと情報収集してみた限りでは、優秀なダンサー達を数多く抱える著名なバレエ団やダンス・カンパニーですら、特にチームドクターやセラピストを帯同させるわけでもなく、その殆どが健康管理は個人任せなのが現状で、専門家からはずさんな管理体制を嘆く声も…。自身に適した正しいコンディショニングを学ぶことが難しい環境の中で、知識や情報を得る機会もなく、自己流で間違ったケアを続ける者も、未だ多いと思います。

誤解があるかもしれないので、ちょっと付け加えますが、別に舞姫は民間療法のすべてを否定するわけでは決してないんです。民間療法の世界にも優秀な治療家さんはいるので、うまく活用していったらいいと思います。実際に舞姫も、信頼する民間の治療家さんはいます(長年に渡ってお世話になる整体師S先生は、舞姫が信頼する数少ない民間治療家のうちのひとり)。

ただ、ご自身が信頼を寄せる民間療法を、自己責任のもとで個人的に活用されるぶんには、一向に構わないのですが、他のダンス関係者や生徒さん達にまで半ば“ゴリ押し”状態で勧めるのは、ちょっと問題アリかと。どんなに自分が良いと思って信じる民間療法でも、同じ“方程式”が他のダンサーさん達にも当てはまるとは限らないです。その危険な道に、他のダンサーさん達まで誘導して巻き添えにしないでほしい。

ぢゃあ、なぜ舞姫は“スポーツ医療”という分野を、半ば“ゴリ押し”状態で多くの人達に勧めるのか?…って話ですよね。国が認める“公的医療”であり、国家資格を有する医学者や理学療法士が科学的な根拠に基づいて研究&開発を進めてきた“スポーツ医療”は、神様が多くの人達に“ゴリ押し”することを許してくれた数少ない分野のうちのひとつだと舞姫は思っています。

勿論、スポーツ医療もまだまだ発展途上の分野であり、医療者や研究者ですら否定的あるいは消極的な考え方を持つ者もいます。舞姫自身も、スポーツ医療がすべてを解決できる万能な分野だとは思っていません。けど、少なくとも悪質な民間療法の類よりは、信頼性は遥かに高いかと。

これまで舞姫自身もネットを通じて懸命に訴え続けてきたことですが、もしダンスの世界“スポーツ医療の介入が可能になれば、これまで舞姫が指摘してきたような厳しい現状も変わると思うんですよね。多くのダンス関係者のみなさんが“スポーツ医療”の可能性に着目し、理解を深めてくれることで、なにかできることがある筈。

股関節の持病の発覚を機に出会うことができた“スポーツ医療”、どうにかしてダンスの世界で普及させたいけど、一介のアマチュアダンサーでしか過ぎない舞姫ひとりの力では限界を感じます(汗)。せめて、舞姫がリハビリ通院を続けて改善していくことで、スポーツ医療魅力底力を、身をもって証明していくことにつながることを願うばかりです。(-人-)

知ってほしい!“スポーツ医療”という分野の存在。

先達て、熱いコーヒーなんぞすすりながらネットの世界を散策していたところ、興味深い記事を見つけました。筑波大学が、医療系&体育系の連携による“スポーツ医学センター”なる施設を開設するそうです(→「競技復帰を一貫支援 スポーツ医学センター、筑波大に来月1日開設 | 常陽新聞」)。

診療・研究、アスリートサポート、健康増進の3部門からなるセンターで、アスリート支援では日本トップレベルの治療・リハビリ体制確立を目指すとのこと。ただ、残念ですが、この類の立派な施設の寵を受けるのは、おうおうにしてトップクラスで活躍する著名なアスリート達のみです。

類似の施設で既に稼働するのは、東京都北区にある「味の素ナショナルトレーニングセンター」が知られていますが、ここも利用対象は基本的に日本オリンピック委員会強化指定選手か、あるいは著名なスポーツ競技団体の推薦を受けた強化選手に限られるとのこと。

スポーツ医療の最先端を駆使してアスリートを支援する総合施設、怪我や病気を抱えながら競技を続けるスポーツ選手にとっては心強い魅力的な存在ですが、その敷居を跨ぐことを許されるのは、国内外で広く活躍する強化選手に限られてしまい、アマチュアとしてスポーツに携わる一般外来の患者さん達が気軽に利用できるまでには至らないのが現状。

じゃあ、“ダンス”に特化したスポーツ医療の総合施設は?…と思って試しに探してみたんですが、これがまたぜんぜんない。散々探して、ようやく見つけたそれっぽい施設が、東京都中央区にある「ダンスキューブ勝どき」。ここは、ダンス用品の総合メーカー「チャコット」直営の複合商業施設で、一般の人達も利用できるのですが、ただやはりショップ等でのグッズ販売やスタジオでのレッスンメニューなどが主軸。

しいて医療めいたものといえば、欧米では医療機関でもリハビリとして取り入れられているという“ジャイロキネシス”が体験できる設備があることくらいで、特に“スポーツ医療”に特化した施設というわけではなさそうな感じ。

一般的にも、まだまだ認知度が低い印象のある“スポーツ医療”という分野ですが、残念なことにダンスの世界では更に普及率は低いです。情報収集するうちに見つけた興味深い記事が、こちら。→「ダンサー孤独な健康管理 熊川哲也さん 靭帯断裂から5カ月:朝日新聞」

日付を確認したところ2007年の記事なので、あれから8年を経て現状は幾分改善されているのかもしれませんし、スポーツの世界で実戦されているようなトレーニング法やコンディショニング法などを取り入れるダンサーさん達も少しずつ増えてきている向きはありますが…舞姫的には、ダンスの世界における“スポーツ医療”の普及は、まだまだ足りなさそうな印象です。

舞姫の近隣では、“スポーツ整形外科”の存在すら知らず、近所の街医者程度の整形外科を受診して湿布剤&鎮痛剤を処方される程度で帰されたり、あるいは著名な大学病院を受診したら、担当したのが学生に毛が生えた程度の頼りない新人医師だったり、ようやく“スポーツ医療”の看板を掲げる医院を見つけて受診したら、そこの院長がスポーツドクターとは名ばかりのペーパー医師だったり…などなど、散々な経験談を未だ多く聞きますよ。

無論、スポーツを知らない医療者にアスリートやダンサーの治療なんぞできなくて当然なわけで、これではダンスの世界で医療不信に陥る者が増えるのも、致し方ありません。舞姫が知るダンス関係者のなかには、公的医療を否定して民間療法に治療の主軸を据える者も、未だ決して少なくないのが現状です。

先に紹介した朝日新聞の記事によると、プロのダンサーさん達ですら、その殆どが健康管理は個人任せなのが現状で、専門家からはずさんな管理体制を嘆く声も…。ただ、こういったところへ“スポーツ医療”の介入が可能になれば、現状も変わると思うんですよね。

幸い舞姫は、7年前の股関節の持病の発覚を機に、保存療法の分野で優れたスポーツ整形外科との出会いに恵まれ、スポーツの世界で実践されるトレーニング法コンディショニング法、そしてスポーツの世界が持つ特有の“考え方”だったり“姿勢”だったり“概念”だったり、そういったことを学び知る機会を得ることができたけど、ダンスの世界ではプロorアマチュア問わず、知識や情報を得られる機会もないまま、やみくもに自己流で間違ったケアを続ける者も未だ多いんじゃないかと思います。

羨ましいと思うのは、著名なアスリート達の多くが、スポーツ医療の知識や経験に優れた理学療法士柔道整復師“トレーナー”として雇い、試合や練習などに帯同させていること。ダンサーのためのスポーツ医療の総合施設を…とまで高望みはしなくとも、プロの専門家を現場に帯同させたりとか、そういったことがダンスの世界でもできないだろうか?

舞姫も所詮は一介のアマチュアダンサーに過ぎないので、個人で優秀なトレーナーを雇って帯同させるような経済力などは当然ないですが、たとえ個人レベルでは到底できないことでも、多くのダンス関係者のみなさんが“スポーツ医療”の可能性に着目し、理解を深めてくれることで、なにかできることがあると思うんですよね。

たとえば、複数スタジオから多数のダンサーさん達が集う合同公演とかだけでも、主催側で経費を捻出したり、出演ダンサーさん達や関係者さん達でお金を出し合ったりして、スポーツ医療の知識や経験に優れた専門家を雇って、本番前日&当日だけでも劇場に帯同させたりとか、理学療法士さんや柔道整復師さんを招いてワークショップを開いて、スポーツの世界で実践されているようなトレーニング法やコンディショニング法とか、いざというときの応急処置の方法など、広く浅くでもダンサーさん達に指導する機会を作ったりとか、ダンススタジオと医療機関が連携して、怪我や病気を抱えるダンサーさん達を適切な診察や治療へ速やかに導けるようにするとか、“スポーツ医療”ダンスの世界でできることが、探ってみたらたくさんある筈。

舞姫がダンスを始めて間もない20年以上前は、スポーツ医療保存療法も殆ど普及していなかった時代だったので、ダンス関係の友人知人も「整形外科なんか行ったって、なにもしてくれないョ」と言って、その殆どが民間療法を推奨しました。あれから20年以上の時を経て、民間療法をゴリ押しする者も以前ほどは少なくなったものの、やはり公的医療に不信感を抱く者も未だ多く、不調に陥った者に対して医療機関を率先して勧めるような声も、まだまだ少ないのが現状。

なにより、まずは多くのダンサーさん達“スポーツ医療”という分野の存在を知ってもらうこと。そして、医療者さん達にも、ダンスの世界のことを知ってもらうこと。そこから始めないといけないですね。

怪我や病気などで不調に陥る者がいたら、「まずは、スポーツ整形外科でリハビリを!」…ダンススタジオの先生達が、そう口を揃えて勧めることが当たり前になるときが、いつの日か訪れることを舞姫は心から待ち望んでいます。

そして、欲を言えばいつの日か、トップレベルで活躍するアスリートさん達やダンサーさん達に留まらず、アマチュアとしてスポーツやダンスに携わる患者さん達にも広く間口を設けるスポーツ医療の総合施設が、舞姫が暮す札幌を含む全国各地にできることを期待したいです。

“身体をいたわる”ことを忘れないで。

珍しくテレビ番組ネタなんですが、帰宅して夕食後なにげにテレビを観ていたところ、NHK「クローズアップ現代」やってまして、早くシャワーを浴びて居間でリハビリしなきゃと思いつつ、興味深い内容だったもので、ついつい観入ってしまったのですが、ちなみにテーマは『無月経、疲労骨折・・・10代女子選手の危機』。激しい練習と食事制限によって引き起こされる“無月経”“疲労骨折”についての特集でした。成長盛んな若い女性アスリート達が抱えるといわれる特有の問題とのことでしたが、舞姫も決して他人事ではありません。

今回の「クロ現」で取り上げられていた“無月経”&“疲労骨折”に限ったことではないのですが、選手生命を蝕むほど重篤な疾患があるにもかかわらず、適切な治療を受ける機会を得られぬまま見過ごされてしまう若いアスリート達が数多く存在する要因は、いったい何なんだろう?

いろんなことが考えられると思いますが、まず舞姫が感じたのは、指導者や選手自身、そして最新情報に疎い医療者にもみられる“医療に関する知識不足”。番組内でも、「無月経で当たり前。正常な月経があるようでは、まだまだ練習不足」といって更に練習量を増やして身体を酷使する選手もいるという話もありましたし、整形外科でも他科疾患に関する知識や情報に欠ける医師だと、婦人科との関連性にまで気付かず「原因不明の疲労骨折」で片づけられてしまうことも多いといいます。

プロ&アマ問わず、スポーツ界ではありがちな話として、選手に負傷や体調不良などがあったとき、医療の知識に欠ける指導者スポーツトレーナーが、過酷なトレーニングを無理矢理させたり、間違ったコンディショニングを施してしまうことで、選手の症状改善を妨げたり、状況によっては却って悪化させてしまう場合もあります。

まして日本では、負傷や体調不良があっても苦痛に耐えて過酷な練習を続けることを“美徳”とする古い風潮が、まだまだ根強く残っています。「体調を崩すのは、練習が足りない証拠。もっとたくさん練習させれば、体調不良など吹き飛ぶ」…などと思っている指導者が存在するとしたら、言語道断です。(-“-)

もうひとつは、選手自身の認識不足。殊に、陸上の長距離競技や、体操や新体操などのアート系スポーツの分野では、厳しい“体重制限”を要する場合も多々あります。スポーツ医療栄養学の知識も持たぬまま、やみくもに過酷なダイエットを試みる選手達も多く存在すると聞きますが、成長過程の若いアスリートが無謀なダイエットと同時並行で厳しい練習を普段通り続けていけば、体調を崩して当然です。

無論ダイエットに限った話ではないですが、大好きなスポーツの分野で“結果を出したい”という気持ちが強くはたらいてしまうあまり、負傷や体調不良に耐えながら練習を続けてしまう選手達も多いと思います(舞姫自身も、過去に憶えがあります…汗)。ただ、目先にある“結果を出す”ことだけに縛られて、盲目にならないでほしい。

5年前に股関節の持病(臼蓋形成不全)が発覚して間もない当時、大好きなダンスを奪われるくらいなら、この股関節なんかどうなったっていいと舞姫は思ってました。だから、「進行性の“不治の病”」だの「悪化すれば人工股関節」だの「運動厳禁!ダンスなどと以ての外!」だの「“身障者手帳”の取得が可能」だの、怖い情報を次々と拾おうとも、“ダンスを諦める”という選択肢は舞姫にはなかったし、たとえこの股関節が壊れて砕け散っても、大好きなダンス続けるんだ!…そう思って自分の気持ちを鼓舞したことを記憶しています。ある意味、舞姫も“盲目”になっていたんですね。

ただ、いま舞姫はそんなこと思ってぁしませんよ。そもそも大切な股関節が壊れてしまったら、ダンスできなくなっちゃうぢゃないですか(笑)。5年間のリハビリ通院で、適切なコンディショニングの重要性を舞姫はたくさん学びました。この疾患と向き合いながら、少しでも長くダンスを続けたいからこそ、その日そのときの体調を的確に判断しながら、身体をいたわっていく必要があるんです。

目先にある“結果を出す”ことだけに縛られず、地道にコンディショニングを続けていくことこそ、舞台でのベストパフォーマンスの近道です。この5年間でそれを身をもって実感してきたからこそ、たとえこの股関節が壊れて砕け散っても云々みたいな考え方は、いまの舞姫はしませんよ。ダンサーは、“この身ひとつが武器”。自分の身体ひとつ満足に護れなければ、舞台人失格です。

今月に入って、スタジオでも毎年恒例の夏の某公演の稽古が始まりましたが、今月からレギュラー入りした新人の高校生ダンサー達が、初々しい爽やかな風を運んでくれます。ちなみに、ウチのスタジオのレギュラー入りの資格は、下は満16歳から。今年で49歳を迎える舞姫とは、じつに33歳もの年齢差があるので、きっとご両親も舞姫と同年代か、あるいは舞姫よりも下の世代でしょう。

これだけ年齢差のある若いチームメイト達と、同じ“レギュラークラスの一員”として一緒に舞台に立てるのは、とても幸せなことだとつくづく感じます。ただ、至らない舞姫のダンサーとして舞台人としての“生命”を、ここまで延ばしてくれたのは紛れもなく、リハビリ通院で学んだ「守り勝つ」ためのコンディショニングの技術です。

勿論、状況によっては、無茶しちゃいかんことを承知で無茶せざるを得ない場合もあることは判ります。ただ、どうか“身体をいたわる”ことを忘れないでほしい。若いダンサーさん達やアスリートさん達も、自分の身体を過信して、無茶を重ねて取り返しのつかない事態に陥ることだけは、なんとしても避けてほしい。そして、ときには適切に医療の力も借りて、コンディショニングの技術を磨いてほしい。ダンスが大好きだから、スポーツが大好きだからこそ、少しでも長く続けるために。